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事務所便り

子ギツネと(ヒメ)チャマダラセセリ −探究し続けること−

突然ですが、チャマダラセセリという地味なセセリチョウの仲間がおりまして、環境省のレッドリストでⅠB類、関東の群馬栃木茨城では最も絶滅危機度の高いⅠ類に分類されている超希少種。
二十数年ほど前からでしょうか。春になると登山のついでにこのチャマダラセセリを探しに野原を探し回ったものですが、全く見つけることが出来ませんでした。見つからないと疲労度は倍増するもので、帰りの高速道路の渋滞もより一層の苦痛を感じ、翌日の仕事にも影響するためか、いつしか山へ行っても調べることをしなくなりました。
最近まですっかり忘れていたのですが、コロナでどこへも行けずネットで蝶を検索していたところ、何と北海道のチャマダラセセリは本州より比較的多く生息しているとのこと。これは探しに行かなければということで今年がその第一回目のリベンジなのですが、正直道東に生息しているという情報のみで、果たして広大な道東を探して見つけることが出来るのだろうか。漠然どころかほぼ無理であろうことは過去の難易度を知っているため重々承知しておりましたが、なぜか確信めいたものがあり、行動を起こせば何か起きそうな気がしましたので、まずは実行です。
昔と異なり、今はGoogleマップで上空から森・伐採地・草原・岩場・崖地など分かりやすく植生も大体予想できますし、地図を購入せずとも所有しているGPSから斜面状況も把握できるため、昔と比較してかなり楽ではあります。しかし、世の中そうは甘くはなく1箇所目、2箇所目、3箇所目と探し回ったのですが、全く気配が感じられません。2日しか調査期間はないため、慎重に考え直します。当日は強風のため蝶が飛びづらい状況ではありましたが、3月に上富良野岳を滑走した時の雪解け状況を思い起こすと、植物が2週間ほど早く進行して低地のものは発生時期が相当早まり終了しているのではと?
標高の高いところにチャマダラセセリは生息していないイメージだったのですが、勝負で一気に標高を上げ源流部に向かいました。以前、車で走った時にエゾトリカブトが群生している所の自然度が高かったため、そこへ向かい駐車後に林道を進むと笹原に沢や湿原が点在するエリアが広がっておりました。風上に山がある関係で風の影響で撮影がしづらくなる問題もなさげです。また、ギョウジャニンニクがたっぷり生育しておりましたが採取された形跡も見られないことから、人が入っていない様子。何か直感で怪しいと思ったため沢の方を歩いていくと、突然目の前の藪で動物が動き出しました。心拍数が一気に上がりましたが、エゾシカ。ちなみにクマ避けスプレー2本、剣ナタ1本構えて進んでます。ツキノワグマでしたら数十回遭遇して襲われかけたこともあるので、出来る限りの対処はしておりますが、ヒグマはどうなるか未知数です。この場所には「今」はいないという確信と匂いもしないため草原を突き進みます。すると、前方3メートルほど先の植物の根際をチラチラと何か小さいものがうごめいているのが目の端に写りました。チラッと見えたその物体は茶色地に白斑模様。まさか本当に?と心拍数はマックス。二十数年経ってようやく目の前を飛ぶチャマダラセセリを見た時には、本当にこの世に存在していたのか〜というのが率直な感想。
諦めないことは大事なんだと。いつかやってくるその日に備えていればチャンスは必ずやってくる。しみじみと人っ子一人来ない源流部の草原で、ニヤつきながらチャマダラセセリを撮りながら感じたのでした。

キタキツネのママ
チャマダラセセリを最初に探したポイントにいたキタキツネ。全然逃げないためコンデジの望遠にて撮影しました。
職員によると美人ママさんらしい。

子ギツネ
急斜面の草原を歩いてチャマダラセセリを探していたところ、背後から突如動物の鳴き声がしたため振り向くと、可愛い子ギツネちゃんの顔が巣穴からヒョッコリ出ていました。
まさか可愛い動物が出てくるとは予想もしていなかったため、慌てて車へ戻り望遠レンズを撮りに行く嬉しいハプニング。

子ギツネ
前々から子ギツネの写真も撮りたかったため、偶然にしてはラッキー過ぎます。
あまりに可愛くチャマダラセセリの調査を辞めて、今日一日キツネ親子の撮影に変更しようかと本気で考え込んでしまいました。

チャマダラセセリ
これが待ちに待った最初のチャマダラセセリ。羽化したてなのか、毛が乾ききっておらず濡れているような個体でした。

チャマダラセセリ
その後は花を吸蜜するチャマダラセセリを待ち構える余裕も出てきました。
人から教えて貰えば楽に見つかるかもしれませんが、それでは新分布の生息調査にはなりません。
何の伝手もない闇夜から掴み取る、信じられないくらい困難な状況であっても、案外奇跡って身近にあって救ってくれるものだと感じるこの頃。

サマニユキワリソウ
サマニユキワリ
チャマダラセセリを撮影できましたので、翌日はさらに希少度の高いヒメチャマダラセセリを撮影すべくアポイ岳へ登山してきました。
午前10時過ぎにはポイント稜線の風速が7m以上になり登山者も増え撮影困難が予想されたため、夜明けと同時にスタート。
馬の背に到着するとアポイアズマギクやヒダカイワザクラが終わりかけていたため、時期的に発生終盤の気がして来て嫌な予感。

ヒメチャマダラセセリ
早朝の稜線は日陰で寒く風速6m前後はあり、山頂からヒダカソウ盗掘現場?ルートを周って気温が暖かくなるまでのんびり撮影することに。暖かくなってきたところで風をかわす裏のポイントを重点的に見ていたところ、昨日のチャマダラセセリを小さくしたものが、同じような飛び方で地面をチラチラ動き回っているのを発見。
今年のアポイ岳も開花時期が早く稜線の風も強かったため、来年また登るかと考えていたところで、まさかまさかのヒメチャマダラセセリ出現。
もうドキドキです。

ヒメチャマダラセセリ
前から
寒い所に生息しているためか、毛むくじゃらでモモンガみたいにモコモコの毛が可愛いです。

目の前に来たモモンガ朝焼け
参考:エゾモモンガ

ヒメチャマダラセセリ
強風に煽られて小石にしがみ付いていた個体。しかし、吹き飛ばされてしまい、慌ててとまったのがアポイアズマギク。ナイスです!
もしかしたら、意図的に風を利用してとまったのかもしれません。しっかり吸蜜していましたから。
環境省:絶滅危惧種ⅠA類、北海道:絶滅危惧Ⅱ類、文化庁:天然記念物

アポイクワガタ
アポイクワガタ
アポイ岳はカンラン岩主体の超塩基性岩植物が多数分布しており、今回は3種類の開花を確認しました。
ヒメチャマダラセセリの食草であるキンロバイはカンラン岩同様、超塩基性岩である蛇紋岩地(至仏山など)で見かけます。なぜ変異しないのかが不思議です。

アポイタチツボスミレ
アポイタチツボスミレ

アポイアズマギク
アポイアズマギク

ノナメクジ(ノコウラナメクジ)
ノナメクジ(ノコウラナメクジ)
手持ちの図鑑では「移入種もあって、野菜栽培地に生息するので害を与える」とあり沖縄以外の日本全域に生息するそうですが、移入種もあるという表現が曖昧で在来種と移入種を見分ける記述がありません。昔の本のため致し方ありませんが、流石に外来種と在来種とでは遺伝子レベルで違うでしょうとツッコミを入れたくなります。
コウラナメクジ科、ニワコウラナメクジ科は基本的にヨーロッパや北アフリカ原産の外来種というイメージがあったのと、アポイ岳の馬の背という在来希少種が密集する場所にて確認したということで参考として掲載しておきました。アポイマイマイを探しておりましたので、ちょっとガッカリな結末ではございますが、確認している文献等ないようでしたので参考まで。
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注)東正雄『原色日本陸産貝類図鑑 増補改訂版』102頁 

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